Essay

京都の憩いの場

高校時代のバスケ部の同級生が日曜日に大阪で結婚式をあげる。バスケ部第一号だ。

 

僕は大学が京都なので、京都の友人に会うため早めに前乗りした。

 

カメラマンの友達が京都駅まで迎えに来てくれて、会って早々写真を撮られた。(実際には集合場所で合流する前にキャリーバッグと重いリュックを背負っている僕を隠し撮りしていた)

 

その写真を、嬉しそうに見せてくる。(おいっ、隠し撮り!)

 

しかし大学を卒業して就職せずに好きなことに熱中する姿には、とても勇気をもらう。

 

そんな彼にひたすら京都駅のテラスで写真を撮りまくられ、満足したのか、仕事があるからと颯爽と去っていった。相変わらず自由なやつだ。

 

そんな彼のことを、やれやれと思いながら、僕は二条城近くにある喫茶店でコーヒーを飲んでいる。

 

入ってすぐ右手側に焼きたてのパンが並べられており、パン屋としての機能も果たす喫茶店のようである。

 

お客さんは、男性のご老人がカウンターに一人、その近くのテーブル席に一人座っていた。

 

僕は人の話を盗み聞きする趣味がある。盗み聞きなんて趣味が悪いと思うかもしれないが、全然知らない赤の他人がどういう会話をしているのかとても興味があるのだ。

 

ご老人二人は、カウンター席とテーブル席に別々に座っているので、カウンター席のご老人(以下C)が、後ろを向かないと向き合うことができない。しかしテーブル席のご老人(以下T)は、相手が振り向くことなどおかまいなしに喋り続けていた。

 

そしてCは新聞を読みながら適当な相槌をうつのみで、まるでTが独り言を延々と続けているようである。

 

T「天皇賞も有馬記念もあかんくてなあ」

 

どうやら、Tは競馬で負けた愚痴をこぼしていた。

 

しかし、慰めの言葉もかけずパラパラと新聞をめくるCは、ああ、とか、そうか、とだけ言う。

 

T「友達にもろた一万六千円分の馬券もあかんかってん」

 

友達に一万六千円分の馬券もらうってどういうことだよ!

 

心の中で、そのご友人の寛大さに困惑しながら独り言に耳をすませていた。

 

すると、今まで新聞をめくりながら適当に受け流していたCがようやく相槌ではない言葉を発した。

 

「この馬ええかもなぁ…」

 

Cは競馬新聞を読み込んでいた。

 

そこで、中年の夫婦が入店してきたので、女性のスタッフが出迎え、席へと誘導する。

 

すると、Cはおもむろに立ち上がり、キッチンの方へ入っていった。

 

あれ?お客さんじゃなかったの?と思っていると、女性スタッフが、「トーストセット2つお願いします」というのでキッチンの奥から「あいよ〜」という声が聞こえる。

 

あいよ〜、じゃないよ!Tのことほぼ無視してたよね!しかも店主だったならお客さんのこともっと大事にした方がいいよ!と思ったが、Tは全く気にしない様子だ。

 

新しく入店したお客さんもおそらく常連客なのだろう。この喫茶店は地域の憩いの場としての機能も果たしているようだ。

 

こういう喫茶店に入ると、ああ京都に来たな、と実感できる。大学生の頃は、こういう喫茶店巡りをしていたっけ。その頃は、そんな日常的な光景になんとも思わなかった。

 

話し相手がいなくなり(ほぼ独り言だったが)手持ちぶたさになったTは、女性スタッフに話しかけていた。釘付けである。

 

いくつになっても、男は女を追いかける存在なのだろうか。

 

ありふれた日常だが、そんな日常にほっこりし、次なる目的地へ向かう。

 

追加

友人の結婚式とてもよかった!

次のメンバーは誰かな。